焼きそばのテキ屋

私が22歳の時だった。

もともと料理がそこそこに得意だった私に、知人から「夏のシーズン限定で焼きそばのテキ屋の仕事の手伝いをやらない?」と話しをいただいた。

どんな人が働いているか考えてみると、あまり乗り気になれなかったけど、「今しか出来ないな」と思い働かせて頂く事にした。

お祭りや花火があると、その会場に行きひたすら大きい鉄板と向き合う。そんな仕事だった。

10年近く前の出来事なので、思い出しながら書いています。
暑くなった鉄板に豚肉を広げて、焼けてきたら端の方によけておく。
野菜を鉄板の半分位を使って、大きいヘラで焼いていく。
水は使わず、麺を残りの半分の鉄板に広げて、その上に炒めた野菜を乗せて麺を蒸らす。
最後に全てを混ぜて、焼きそばの粉末を混ぜる。

普通に生きてきた私には、新鮮で初日からのめり込んだ。

私と一緒に働く人は10個上の32歳。

見た目は少し恐いが、とても優しく親切に仕事を教えてくれた。

夏の暑さに加えて人口密度の高い場所で、一枚の鉄板と向き合うのは体力を使う。
体力にはそこそこに自身があった私だが、お祭りならではの活気と暑さで「少ししんどいな」と思っている時に、先輩はビールを黙って渡してくれた。

カラカラに乾いた喉に流し込むビールはとてもおいしかった。

何日か連続しておんなじ場所で焼きそばを作る時は、買いにきてくれたお客さんが私の事を覚えていてくれた。

いつも買う側の立場だった私が、作った焼きそばをパックに詰め込んで売る。
作る人の気持ちが少し解った気がした。

あの日以来、家で焼きそばを作るたびに、このテキ屋の仕事の事を思い出す。

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